本の中の植物と園芸

『春の数えかた』

動物行動学者、日高敏隆さんの『春の数えかた』という本を読みました。日本エッセイストクラブ賞を受賞している作品です。

昆虫や植物の生態が学者としての日高さんの目をとおして書かれていて興味深いお話がたくさんありました。

たとえば、アゲハの幼虫がチョウになるまでにはミカンの葉っぱを70枚以上食べそうです。(モンシロチョウならキャベツの葉っぱ1枚でチョウになれるが)鉢植えのミカンの葉っぱでは一匹のアゲハでも足りないそうです(^_^;)

「生態系の調和」という口当たりのよい言葉も実は「妥協」に過ぎず、「共生」しているように見える花と昆虫も、互いに相手を徹底的に利用して、それぞれ自分の子孫をできるだけたくさん残そうとしているだけだというシビアな見解もあります。

表題作「春の数えかた」ではどうやって生きものたちは春が来るのかがわかるのかというお話。
虫には発育限界温度というのがあって、たとえばそれが5度だとすると、

ある日気温が7℃の日は   7-5=
    気温が5℃以下の日  0
    気温が6℃の日      6-5=

こうやって、有効温量が加算されていき総額が一定値(たとえば180とか)を超えると卵から孵ったり、サナギからチョウになったりするそうな。生きものの体の中に何か春をカウントしていく仕組みが備わっているようです。

春の待ち遠しいこの頃ですが、日高さんが冬の中に春の兆しを見つけ喜々とされている様子など今の季節に読むのにぴったりの本です。

      

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小川洋子の『夜明けの縁をさ迷う人々』

小川洋子さんの最新作です。9作の短編が収められています。
夜明けのふち・・・人生の薄明かりの射しそうな場所を危なっかしく歩いているような人たちが登場してくると思えば、いつしか夜の側に逆戻りして閉じこめられてしまう底知れない怖さを感じる物語でした。

その中のひとつ『お探しの物件』
この物語の中の不動産屋は普通の不動産屋とは逆に、物件が求める住人を捜すためにある
物件のひとつ瓢簞屋敷は瓢簞の世話をしてくれる住人を捜している。
蔓の剪定、害虫の駆除、肥料をまき、雄花と雌花を人工授粉させ、収穫し、中身を腐敗させ、乾燥させ永久保存する。前の住人の瓢簞アーティストは人生のすべてを瓢簞に捧げ世話をやいたが・・・。

植物は動物と違って世話を多少手抜きしても枯れはしないだろうなんて甘い考えでいると、怖いことになりそうな物語でした。

読み進むうちに結末の予感がじわりじわりと漂ってきて、前回読んだ「ミーナの行進」とは違う味わいの作品でした。

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ビアトリクス・ポターのスケッチ

映画『ミス・ポター』が公開されました。なかなか、映画を見に行く時間がないので、とりあえず、パンフだけでもと、近所の映画館に行くとすでに公開3日目でパンフが品切れとの表示。ダメもとで店員さんに聞いてみると、最後の一冊を渡してくれました(^_^;)

ビアトリクス・ポターは、私のあこがれの人ですが、やはりけっこうな人気のようです。

さて、映画はまだ見ていませんが、今日はポターさんに関するおすすめの本を紹介してみたいと思います。

この本は、1990年に求龍堂グラフィックスから出版されています。

なんといってもイギリスの湖水地方の写真がピーターラビットの絵本の挿絵とともにたっぷりと載っていてかなり堪能できる本です。

ビアトリクス・ポターの生涯についても写真やスケッチとともに丹念に紹介されています。、驚かされるのは、8歳の頃に描かれたという毛虫のスケッチ、実に様々な毛虫が愛情を持って描かれています。それからキノコのスケッチの精密で美しいこと。実はキノコ学者になるのが夢だったというのにはびっくりさせられます。

生涯をかけたナショナルトラストへの貢献など、ビアトリクス・ポターを知るには最高の一冊です。

もちろん、代表作のピーターラビットの絵本はどれをとっても宝石のような本です。ユーモアと上品なアイロニーにあふれていて、これは絶対手元におきたい本です。私は、娘へのクリスマスプレゼントという大義名分で購入しました(^-^)

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柳澤桂子『すべてのいのちが愛おしい』

集英社文庫 ナツイチ の一冊です。

まずこの言葉にはどっきりさせられます。

「あなたは、虫の気持ちになったことがありますか?」毎日虫をピンセットでつまんでいる私にとってちょっときついひと言です。

 生命科学者である柳澤桂子さんは大ベストセラー『生きて死ぬ智慧』を書かれた方です。そちらは難しそうでまだ読んでいませんが、この本は孫へのメッセージというかたちで書かれているため平易で私でも読める本です。

ビックバンから地球の誕生、命の誕生、生き物のや人間の生と死などについての内容ですが、特にDNAが自分をコピーする仕組みについてはわかりやすく、へーそうだったのと納得させられました。

私たちは体の中に、DNAという38億年書きつづられたいのちの手紙のコピーを持っているのです・・・印象に残った言葉です。

さて、この本の中にはいろいろな生き物が出てきます。その中にカゲロウの話がありますが、カゲロウの成虫には口がなく、交尾をして卵を産めば死んでしまうそうです。どうもこのカゲロウは私がいつもカゲロウだと思っていた虫とは違うようで調べてみました。

カゲロウ(カゲロウ目)幼虫は水中で生活し、成虫は水中に産卵する

クサカゲロウ(アミメカゲロウ目)葉に産み付けられた卵はうどんげと呼ばれる。幼虫はアブラムシやハダニを食べ、昆虫の死骸を背負いながら歩く。

ウスバカゲロウ(アミメカゲロウ目)幼虫はアリジゴク、成虫はトンボに似ている。

なーんか夏休みの昆虫観察の宿題のようになってしまいましたが・・・ほんとにこの年齢になっても知らないことばかりです。

Dscf6367 これは、ナツイチの景品のストラップです。何種類かあって、袋に入っているので選ぶとき中身はわからないのですが、開けたらじょうろを持った蜂さんでした(^o^)

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『バッテリー』のイチゴ

まだ映画は見ていないが、本は一気に6巻まで読んだ。文章のひとつひとつがキラキラと輝いている。

第1巻のなかに主人公巧くんがなんと喀血するシーンがある。病弱な弟の青波くんではなくて・・・ほんと、どっきりした・・・どうしてそうなったかは読んでみてね。

さてイチゴのエピソードだが、野球仲間の農家の子から売り物にならないイチゴをごちそうになるシーンがある。この時の巧が、こんなうまいイチゴを作れることはすごいことだと素直に感心し、いつもの巧らしくないとあきれられる。

うまいイチゴが作れるより、野球の才能のある方がいい、イチゴ作ってなんぼのもんじゃ、プロの選手になれば何億ともらえると友達に言われると、「金のことではなくて・・・よくわかんないな・・・」と考え込む。おいしいものを食べてふと無防備になる巧がいい。

 うちのベランダの4株のイチゴはようやく花をつけたばかりだけど、どうか巧くんをうならせるようなおいしいイチゴに育ってほしい。

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『銀のロバ』の雨ごい

 時は第一次世界大戦中、場所はイギリス海峡に近い森の中。行き倒れになった脱走兵を近くに住む姉妹が見つける・・・

中尉は二人の姉妹とその兄にロバの出てくる物語をいくつか話して聞かせる。その中で雨ごいの話がある。雨ごいに来たロバに空は言う。じきに雨が降るだろう、雨は、何もかもほしがる者たちのためではなく、ほとんど何もほしがらない者たちのために降っているのだと。

 動物も植物も水がないと生きられない。路地植えの果樹や野菜は自然の恵みの雨を何の欲もなくただただ受け入れる。でもベランダの鉢植えたちには恵みの雨は降らない。塩素の入った水だけど、毎日降らしてあげるから、どうかいじけず育ってね。

銀のロバ ソーニャ・ハートネット 主婦の友社

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『一億百万光年先に住むウサギ』の中の恋樹

 題名からすると、SFチックなファンタジーのようだが、中3の男の子が主人公のロマンチックでミステリアスな恋の物語。地元、湘南が舞台で読んでいて楽しい。

この物語の冒頭に出てくる恋樹(こいのき)はドイツにある。樹齢500年の巨木。私の好きな屋久島の杉たちのようだ。この恋樹の話を主人公に聞かせる大学の元教授は、『古い木には精霊が宿る』という。

人間の寿命を遙かに超えて生きている古木は確かに神のような存在感がある。そして古木ではなくても、植物には命がある。縁があって私のベランダに来た果樹や野菜たちにもそれぞれ精霊たちがついているはず。

一億百万光年先に住むウサギ 那須田淳 理論社

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『穴』の野生のタマネギ

 主人公スタンレー少年は無実の罪でグリーン・レイク・キャンプという、緑のまるでない砂漠の中の矯正施設に送られ、毎日毎日穴を掘らされる。ある呪いのおかげで5世代に渡って不運が続いているのだが、スタンリーは運命を逆転するために冒険に出る・・・

グリーン・レイク・キャンプの過去と現在を行きつ戻りつする物語のキーワードはタマネギピーチジャム。タマネギとピーチジャムによってスタンレーと友人のゼロは命を救われる。ストーリー展開の見事さに不幸続きの話がさわやかに感じられた。

この物語を読んで、野生のタマネギの存在を知った。野菜や果樹にしても今は野生からはほど遠いけれど、よく考えると昔はみんな野生だったんだよね。

町の人たちは具合が悪くなると医者にも行ったが、タマネギも買いに行った。タマネギは血液サラサラ効果で知られているけれど、昔から人気があったのだ。

それから物語の中に出てくるピーチジャムは魅力的。桃にシナモン、クローブ、ナツメグ、そして秘密のスパイスを加えて作るという。一度味わってみたいな。

HOLES ルイス・サッカー 講談社

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『きよしこ』のどんぐり

 主人公のきよし少年は吃音のため思うようにしゃべることができない。彼は、父親の仕事の関係で転校を何度も余儀なくされ、そのたびに新しい人間関係つくりに苦労しながらも少しずつ成長していく。

 これは小5のときのはなし。5校目の転校さきの町の神社でおっちゃんと知り合う。おっちゃんはどんぐりが落ちていたら拾って、遠くに運んで捨てなくてはいけないと妙なことをいう。どんぐりは親の木のそばに落ちたままだと、芽を出しても日も当たらず、根も張れず育たないからだという。そうしてどんぐりを拾っては遠くに放っている。

 うちのマンションのベランダは南向き。果樹たちには日当たりは良好でいいけれど、コンテナやポットで自由に根が張れないのはチョット申し訳ない。それにしても、植物も人間と同じで親ばなれは必要なのだ。 

きよしこ 重松清 新潮文庫

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『西の魔女が死んだ』の虫の駆除

 中学に入学した五月、主人公まいは不登校になり、祖母のもとで過ごす。そして、始まる魔女修行・・・

 おばあちゃんの家の庭の植物たちが生き生きと描かれている。その中でハーブティーで青虫やアブラムシを駆除する場面がある。ミントとセージを鍋やボールに入れ、上からお湯を注ぎしばらく置いておく。濃い色が出たら水を足してじょうろで野菜に撒く。

 これから、暖かくなるとベランダには何が集まってくるかな?すでにハモグリバエにやられエンドウが重病だけど、試すにも我が家のミントとセージの苗はまだまるで育ってない。

西の魔女が死んだ 梨木香歩 新潮文庫

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